2014年 02月 18日
小児の整形靴(3) |
およそ3年ぶりの更新です。
私は2004年に独立開業したのですが、靴型装具に関しても靴の製作を委託する会社は変わりましたが、靴のデザイン的な事については以前とほぼ変わらない感じでやっていました。革の色も60色くらいそろえ、時にはワンポイントの飾りを入れるなどしてそれなりに満足していただいているつもりでした。ところが、
忘れもしません。あれは2005年の春のことです。いつものようにたくさんの色見本から患者さんに色を選んでもらい、バンドと履き口のクッション部分は色を変えたぐらいにしてできた靴がありました。靴の適合もその人専用のラスト(靴型・木型)を作り、仮合わせも透明なチェックシューズを履いてもらい合わせただけあってぴったりフィットしているし、何より沢山ある色見本の中から自分で選んだ革で作った靴だからさぞかし満足していただけただろうと思っていました。
そんな靴が出来上がって納品後何週間か後の日曜日。私の家の近所のショッピングセンターでその靴を履いた患者さんとばったり出会いました。その子は当時小学生の男の子で、お母さんと二人で買い物に来た様子でした。その子のお母さんが私を見つけてくれて「あら、尾田さん。いつもおせわになっています。」と笑顔で話しかけてくれました。私もお話しさせていただきながら心の中で(おー。○○君ちゃんと整形靴はいてくれてるねー。よしよし)と思っていました。そして笑顔で挨拶を交わしてお別れしました。
そして何十分かあと、おもちゃ売り場の近くを通りがかったとき再びその少年を見かけたのです。その日は何か新しいゲームが発売されたのか何かでたくさんの小学生が列を作って並んでいました。そして○○君もその列の中ほどに並んでいたのです。私は自然と彼らの足元を見ました。当然彼は私が手がけた整形靴を履いているのですが、その前後に並んでいるこどもたちの靴は当然ながら市販のかっこよくて軽くていかにも早く走れそうな運動靴です。
私はその光景に大変ショックを受けました。
彼らの中に入ると私が手がけた靴は完全に浮いた存在なのです。冷静に考えると当たり前のことなんですが、、、、
それまで私は患者さんのリアルな生活をちゃんと考えて仕事をしていたのでしょうか?
ああ、自分はそれまでの整形靴と比べて、ちょっとマシになっただけで勝手に満足していた。本当に自分が恥ずかしい。普通に生活している小学生の靴とはまるっきり別の靴なのに当たり前のつもりでいた。なんて独りよがりなんだろう。○○君ごめんなさい。
私はその小学生の列を見ながら、動揺で自分の耳が赤く熱くなっていくのを感じていました。
ああー。今まで自分は勝手に整形靴のデザインに枠を作っていた。患者さんは今までよりマシな靴が欲しいんじゃない。本当に心から気に入った靴が欲しいんだ。友達と一緒にいても違和感のない市販靴みたいなかっこいい靴や、特注品ならではのその人のイメージにぴったりな靴。そんな靴を目指そう。
私は涙がこぼれそうなのをこらえながら、今まで自分勝手に設定していた整形靴の限界を捨てようと心に誓いました。写真はその時の靴です。
今思えばこういう靴もファッションによってはかっこいいと思うのですが、あの時の小学生の行列の中ではやっぱり浮いてしまいますね・・・とにかく私にとっては重要な靴です。
私は2004年に独立開業したのですが、靴型装具に関しても靴の製作を委託する会社は変わりましたが、靴のデザイン的な事については以前とほぼ変わらない感じでやっていました。革の色も60色くらいそろえ、時にはワンポイントの飾りを入れるなどしてそれなりに満足していただいているつもりでした。ところが、
忘れもしません。あれは2005年の春のことです。いつものようにたくさんの色見本から患者さんに色を選んでもらい、バンドと履き口のクッション部分は色を変えたぐらいにしてできた靴がありました。靴の適合もその人専用のラスト(靴型・木型)を作り、仮合わせも透明なチェックシューズを履いてもらい合わせただけあってぴったりフィットしているし、何より沢山ある色見本の中から自分で選んだ革で作った靴だからさぞかし満足していただけただろうと思っていました。
そんな靴が出来上がって納品後何週間か後の日曜日。私の家の近所のショッピングセンターでその靴を履いた患者さんとばったり出会いました。その子は当時小学生の男の子で、お母さんと二人で買い物に来た様子でした。その子のお母さんが私を見つけてくれて「あら、尾田さん。いつもおせわになっています。」と笑顔で話しかけてくれました。私もお話しさせていただきながら心の中で(おー。○○君ちゃんと整形靴はいてくれてるねー。よしよし)と思っていました。そして笑顔で挨拶を交わしてお別れしました。
そして何十分かあと、おもちゃ売り場の近くを通りがかったとき再びその少年を見かけたのです。その日は何か新しいゲームが発売されたのか何かでたくさんの小学生が列を作って並んでいました。そして○○君もその列の中ほどに並んでいたのです。私は自然と彼らの足元を見ました。当然彼は私が手がけた整形靴を履いているのですが、その前後に並んでいるこどもたちの靴は当然ながら市販のかっこよくて軽くていかにも早く走れそうな運動靴です。
私はその光景に大変ショックを受けました。
彼らの中に入ると私が手がけた靴は完全に浮いた存在なのです。冷静に考えると当たり前のことなんですが、、、、
それまで私は患者さんのリアルな生活をちゃんと考えて仕事をしていたのでしょうか?
ああ、自分はそれまでの整形靴と比べて、ちょっとマシになっただけで勝手に満足していた。本当に自分が恥ずかしい。普通に生活している小学生の靴とはまるっきり別の靴なのに当たり前のつもりでいた。なんて独りよがりなんだろう。○○君ごめんなさい。
私はその小学生の列を見ながら、動揺で自分の耳が赤く熱くなっていくのを感じていました。
ああー。今まで自分は勝手に整形靴のデザインに枠を作っていた。患者さんは今までよりマシな靴が欲しいんじゃない。本当に心から気に入った靴が欲しいんだ。友達と一緒にいても違和感のない市販靴みたいなかっこいい靴や、特注品ならではのその人のイメージにぴったりな靴。そんな靴を目指そう。
私は涙がこぼれそうなのをこらえながら、今まで自分勝手に設定していた整形靴の限界を捨てようと心に誓いました。写真はその時の靴です。
今思えばこういう靴もファッションによってはかっこいいと思うのですが、あの時の小学生の行列の中ではやっぱり浮いてしまいますね・・・とにかく私にとっては重要な靴です。
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by oda_hirohiko
| 2014-02-18 02:03
| 義肢装具